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新築ワンルーム投資の特徴は?中古との価格の違いや成功のポイントとは
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昨今、新聞、雑誌、WEBサイトなどの広告欄に「新築ワンルーム投資」の文言が掲載されているのを目にする機会が増えました。広告なので新築ワンルーム投資のメリットが大々的に謳われていることが多いですが、そのメリットが裏を返せばデメリットであることを気づいている人は少ないといえるでしょう。
また、同じワンルーム投資といっても、新築と中古では様々な違いがあります。
これらの違いを理解して、それぞれの特性にあった目的と運用を実践していく必要があります。
この記事では新築ワンルームマンションへの投資について、中古の場合と比較しながら解説していきます。また、新築ワンルーム投資で失敗してしまう理由や、新築ワンルーム投資が向いている人なども紹介していきますので、これから不動産投資を始めようと思っている方はぜひ読んでみてください。
合わせて読みたい: ワンルームマンション投資のメリットと「失敗する」「儲からない」と言われる理由
新築ワンルームマンション投資の特徴
新築ワンルーム投資にはどのような特徴があるのでしょうか。
そもそも新築ワンルーム投資とは、新築マンションの一室を購入しそれを第三者に賃貸することで、家賃収入を得る投資手法の一つです。
中古のワンルーム投資を比較すると、新築ワンルーム投資は以下のような特徴があります。
・物件の価格が中古よりも高い
・新築なので新しい設備などを導入している場合が多く、老朽化リスクが低く修繕費などの維持費が発生しにくい
・新築ブランドによる効果で入居者を集めやすいため、空室リスクを軽減できる
・中古よりも築年数が浅いため、売却しやすい(キャピタルゲインによる利益は得にくい)
・取得費用が高いため、中古よりも利回りが低くなる
利益の出し方
不動産投資で利益を出す方法には、インカムゲインとキャピタルゲインがあります。分かりやすくいうと、インカムゲインは毎月の家賃収入のことです。キャピタルゲインは、不動産の売却益のことです。
現在の新築ワンルームマンション投資においては、物件の取得費用が割高であり、売却時にそれ以上の金額で売ることが難しく、キャピタルゲインでの利益確保は困難な状態だといえます。そのため、新築ワンルーム投資ではインカムゲインで投資戦略を立てるのが現実的となります。
収支計算の例
新築ワンルームマンションの場合、立地により購入価格や利回りに大きく差が出ます。特に東京都23区内では、新築価格は3,000万円以上が一般的となりました。それに伴い表面利回り[*1]も3~3.5%と低くなり、実質利回り[*2]に至っては、ローンの金利とさほど変わらない状態です。したがって、実質利回りで算出されるイールドギャップ[*3]が非常に小さく、0に近い状態になっています。
イールドギャップが何%以上あれば良いかという指標は、個別の物件ごとに条件が異なり、一概にはいえません。しかし2%を切る物件であれば、毎月の収支がゼロに近いかマイナスになるため、余程の事情がない限り避けた方が良いでしょう。
事例①
ここで一つの事例を用いて、下記条件の新築ワンルームマンションを購入した場合の表面利回り、実質利回り、イールドギャップを算出してみましょう。
- ・購入価格:3,000万円、購入時諸経費:120万円(購入価格の約4%)、自己資金:320万円
- ・借入金額:2,800万円、金利:2%、借入期間:35年、借入返済額:111万円/年
- ・家賃収入:12万円/月、144万円/年
- ・必要経費:36万円/年(管理費、修繕積立金、火災保険料、固定資産税など、家賃収入の約25%)
ちなみにROI(投資収益率)も算出してみます。ROIの算出式は、実質利回りに借入返済額を加味したものです。ROIがマイナスになると収支もマイナスになります。損益分岐点を見極めるのに利用できる算出式です。
この事例でのROIを算すると、
となり、収支はマイナスです。1か月でも空室が出れば赤字額はさらに膨らみます。自己資金比率を高めるか、断念した方が賢明といえます。
新築ワンルームマンションの価格相場
(東京カンテイ「マンションデータ白書 2020」
上のグラフをみてみると、首都圏における新築マンションの価格平均は、10年前と比べ約1,700万円も上昇しています。この上昇率は中古マンションよりも大きく、新築マンションは今後も価格が上昇し続けるであろうと予測できます。
また、新築マンションの平均専有面積は少しずつですが縮小傾向にあり、ワンルーム物件等の小規模物件の供給戸数が増加していると考えられます。
新築ワンルームマンション投資で失敗する理由
東京都内・政令指定都市をはじめとした都心部では、新築ワンルームマンション価格が高騰し続けています。土地仕入額の高騰、建設作業員不足による人件費の高騰・資材の高騰による建設費の高騰などが原因でしょう。
取得費用が高額になることにより、新築ワンルーム投資のリスクは高まり、失敗する事例も増えているといえます。
新築ワンルーム投資で失敗する原因は、主に以下の4つです。これらは、不動産営業マンが新築ワンルーム投資のメリットとして、初心者に対して説明する常套文句でもあります。
- ①表面利回りだけを見て購入した→ 実質利回り、イールドギャップ、ROIまで考慮すべき
- ②フルローン・オーバーローンで購入した→ ローン返済比率が高く危険な状態
- ③購入時諸経費・必要経費を把握せず購入した→ 購入してから、赤字になることが判明
- ④家賃保証を利用して購入した→ 高額な保証料により収支はさらに悪化
上記4項目は、新築ワンルーム投資が危険といわれる理由にもなります。以下で、それぞれの項目について解説します。
表面利回りだけを見て購入した
表面利回りだけを見て購入の判断をすると、収支が赤字のワンルームマンションを購入すしてしまう可能性が高まります。先ほどの収支計算で用いた事例をまとめると下表のようになります。
利回り | 計算結果 | 判断の目安 |
---|---|---|
表面利回り | 4.8% | 5%以下は危険領域 |
実質利回り | 3.5% | 4%以下は危険領域 |
イールドギャップ | 1.5% | 2%以下は危険領域 |
ROI | -0.1% | 0%が損益分岐点 |
顧客に「預金金利よりもはるかに良いです」という謳い文句で表面利回りだけを提示してくる不動産営業マンがいます。収支計算に関する知識がないと、この言葉に騙されてしまうでしょう。検討すべきは、表面利回りではなく、実質利回り・イールドギャップ・ROIまでです。
ROIを算出することにより、新築ワンルーム投資の損益分岐点が分かります。不動産営業マンも、イールドギャップやROIを知らない場合がありますので、注意が必要です。
フルローンで購入した
十分な資産を所有していて、いつでもローン返済できる人なら、フルローンを利用しても問題はありません。しかし、資産のない人が、フルローンを利用すると、空室期間が長引いた際にローン返済不可に陥る可能性が高まります。少なくとも20~30%位の自己資金を投入できなければ、新築ワンルームマンション投資は危険といえます。
●ローン返済率
ローン返済率は、家賃収入に対するローン返済額の割合です。自己資金割合を高めることはローン返済率を小さくし、キャッシュフローやROIの改善に寄与します。
ローン返済率 | 安全度合い |
---|---|
40%未満 | 優(安全) |
40%~50% | 良(注意) |
50%~55% | 可(警告) |
55%以上 | 不可(危険) |
●事例②
事例①の場合において、自己資金割合の違いによる各指標値を下表にまとめました。
自己資金割合 | 10% | 20% | 30% | 40% |
---|---|---|---|---|
自己資金 | 320万円 | 620万円 | 920万円 | 1,220万円 |
借入金額 | 2,800万円 | 2,500万円 | 2,200万円 | 1,900万円 |
年間家賃収入 | 144万円 | |||
年間必要経費 | 36万円 | |||
ローン返済額 | 111万円 | 99万円 | 87万円 | 76万円 |
ローン返済率 | 77.1% | 68.8% | 60.4% | 52.8% |
表面利回り | 4.8% | |||
実質利回り | 4.8% | |||
ROI | -0.1% | 0.3% | 0.7% | 1.0% |
キャッシュフロー(手残り額) | -3万円 | 9万円 | 21万円 | 32万円 |
この場合、自己資金割合を40%投入して、ようやくローン返済率が52.8%です。ローン返済率の観点からは、このワンルームマンションの場合には自己資金を40%以上入れるか、断念した方が賢明といえます。
購入時諸経費・必要経費を把握せず購入した
不動産投資を始める際には、購入時に要する諸経費と、購入後毎年要する必要経費を事前に把握しておくことが大切です。これらを曖昧な状態で購入すると、後で赤字経営になることに気づきます。
以下に購入時と運用時に必要となる諸経費をまとめました。
購入時諸経費(購入時出費) | 必要経費(毎年出費) |
---|---|
ローン手続費用 | 管理費(管理業務委託費) |
修繕積立基金 | 修繕積立金(共用部分) |
― | 日常修繕費(専用部分) |
売買仲介料(購入価格の3%+6万円)[*4] | 賃貸仲介料(家賃の1~2か月分)[*5] |
火災・損害保険料(一括払いの場合) | 火災・損害保険料(毎年払いの場合) |
不動産取得税・登録免許税・印紙税 | 固定資産税・都市計画税 [*6] |
司法書士報酬(登記手続き) | 税理士報酬(確認申請)[*7] |
購入時諸経費の目安は、購入金額の3~5% (売買仲介料が不要な場合) |
必要経費の目安は、家賃の25%前後 (日常修繕費、賃貸仲介料、税理士報酬を除く) |
家賃保証を利用して購入した
家賃保証システムは賃貸経営を家賃保証会社に丸投げする手法です。そのメリット・デメリットを下表にまとめます。
メリット | デメリット |
---|---|
空室リスク、家賃滞納リスクの解消 入居者トラブルから回避 建物・設備の不具合から回避 |
高額な保証料(家賃収入の10~20%)が必要 入居者選定不可 契約更新時、家賃値下げ要求の可能性有 マンション経営能力が育たない |
家賃保証システムは様々なリスクやトラブルから回避できることがメリットです。一方で、高額の保証料を支払うと収支は悪化します。さらに所有者は入居者状況、住戸内の設備の不具合などを全く把握しないようになります。
所有者が賃貸経営について何も分からない状態にしておくことで、家賃保証会社のしたいようにすることができます。それが家賃保証会社の狙いです。入居率が落ちてくると、契約更新時に家賃値下げを理由もなく要求してくることがあります。
また、不要なリフォーム工事を要求してくることもあります。そうなると家賃保証会社との間でトラブルが生じ、最悪の場合には訴訟へと移ることもあるでしょう。
新築ワンルームマンション投資が向いている人
新築ワンルーム投資に向いている人は以下のような人です。戦略的に投資を考えられる人が向いているといえます。
- ①長期投資として購入する人→ 含み資産を考慮している
- ②節税(相続税)対策として購入する人→ 評価減を利用する
- ③自主管理できる人
上記3項目は、新築ワンルーム投資のメリットにもなります。以下で、それぞれの項目について解説します。
長期投資を検討している人
ワンルームマンションの評価は、購入後、引き渡しが完了した時点で20~30%下落します。事例①のワンルームマンションの場合、購入時は3,000万円ですが、引き渡し後には2,400万円以下の評価額となります。販売会社の経費が建物価格に20~30%上乗せされているからです。
また築年数が経過するとそこから徐々に評価は落ちていきます。よってキャピタルゲイン(売却益)を得ることは、好条件を備えたワンルームマンションでない限り困難です。
●含み資産
しかし、将来において売却した際につく価値(含み資産)とインカムゲイン(家賃収入)とを合わせて検討することにより、出口戦略の一つとすることができます。不動産投資のなかで、ワンルームマンション投資は流動性が高い(売却しやすい)のがメリットです。その考え方を事例③で解説します。
●事例③
下記条件にて、将来の売却価格(含み資産)ならびに損益収支をシミュレーションします。
- ・購入価格:3,000万円、購入時諸経費:120万円(購入価格の約4%)、総投資額:3,120万円
- ・総投資額を全額自己資金で賄う
- ・家賃収入:144万円/年(変動なし)
- ・売却価格:1年目;購入価格の80%評価、3,000万円 × 80% = 2,400万円
2年目以降1.5%(45万円)ずつ評価が下落
経過年数 | 年間家賃収入 | a累計家賃収入 | b売却価格 | c初期総投資額 | d売却時損益 d=a+b-c |
---|---|---|---|---|---|
1年 | 144万円 | 144万円 | 2,400万円 | 3,120万円 | -576万円 |
2年 | 144万円 | 288万円 | 2,355万円 | 3,120万円 | -477万円 |
3年 | 144万円 | 432万円 | 2,310万円 | 3,120万円 | -378万円 |
4年 | 144万円 | 576万円 | 2,265万円 | 3,120万円 | -279万円 |
5年 | 144万円 | 720万円 | 2,220万円 | 3,120万円 | -180万円 |
6年 | 144万円 | 864万円 | 2,175万円 | 3,120万円 | -81万円 |
7年 | 144万円 | 1,008万円 | 2,130万円 | 3,120万円 | 18万円 |
8年 | 144万円 | 1,152万円 | 2,085万円 | 3,120万円 | 117万円 |
9年 | 144万円 | 1,296万円 | 2,040万円 | 3,120万円 | 216万円 |
10年 | 144万円 | 1,440万円 | 1,995万円 | 3,120万円 | 315万円 |
7年目以降に売却した場合の損益は、プラスとなります。ただし、必要経費・空室・家賃下落を加味すると、損益分岐点は、後ろにずれこむといえるでしょう。しかし、立地によっては2年目以降の評価が落ちない場合もありますので、その際には損益分岐点は早くなります。このように長期投資として取り組むと、出口戦略も立てやすくなります。
節税(相続税)対策が目的の人
多くの資産を所有している人にとって、相続税は悩みの種といえます。しかし、不動産投資を活用することにより、相続税を減額することができます。なかでも新築ワンルーム投資は、相続税効果が大きくなるのがメリットです。詳しくは下記で解説します。
相続税の計算式は下記の通りです。
ここで、現金・預金・有価証券などは時価で評価されますが、不動産(土地、建物)は時価より下げられて評価されます。結果として、相続税を減額することができます。
●土地評価額
土地は市街地の場合には、路線価方式で評価され、地価公示価格の約80%の価格になります。その土地に賃貸物件が建つと、貸家建付地評価となり、土地評価額はさらに約20%(借地権割合×借家権割合)下がります。よって、トータルとして80%×80%=64%の評価になるのです。
●建物評価額
建物評価額は、固定資産税評価額が使われ、建築費の40%~50%の評価になります。さらに賃貸物件である場合、建物評価額は30%(借家兼割合)下がり、70%の評価となります。よって、40%~50%×70%=28%~35%の評価になります。建物評価額の下落が大きいため、ワンルームマンション投資のメリットになります。
●事例④
ある男性の資産が、現金で1億円あります。家族構成は妻と子ども2人で、法定相続人は3人です。相続税対策のために下記条件の新築ワンルームマンションを現金で購入しました。この場合の相続税を解説します。
- ・購入物件:RC造(鉄筋コンクリート造)1DK1戸
- ・購入価格:3,000万円、購入時諸経費:120万円(購入価格の約4%)、総投資額:3,120万円
- ・購入価格内訳:土地部分:1,000万円(持分割合)、建物部分:2,000万円
- ・土地評価:路線価方式、借地権割合:60%、借家兼割合:30%
- ・建物評価:固定資産税評価額:建物部分の50%
- ・所有資産:現金1億円
なお、相続税の税率については、国税庁のWEBサイトを参照してください。[※1]
●事例④-1:現金で1億円を所有したまま相続となった場合
●事例④-2:現金で3,000万円の新築ワンルームマンション投資をした場合
よって、相続税が860万円から487.2万円に減額され、約43%減額することができます。
自主管理できる人
マンション投資の成功者は自主管理することにより、入居者とのコミュニケーションを大切にします。建物・設備の点検・確認を自ら行うことで、マンション経営能力を向上させます。新築ワンルーム投資の最大のメリットである修繕の手間や費用がかからない期間を利用して、自主管理のノウハウを身に着けるように心がけるといいでしょう。
マンション経営の成功者で、家賃保証システムを採用している人はあまりいません。マンション経営を丸投げして、経営能力を培っていないオーナーは成功者とはいえないからです。
最後に
今回は新築ワンルーム投資の特徴や、失敗してしまう原因、新築ワンルーム投資に向いている人など、事例を利用し解説してきました。
新築ワンルーム投資は、利回りが小さい分リスクを伴う投資です。それだけに、購入価格の30%以上の自己資金を投入できる人におすすめといえるでしょう。
また新築ワンルーム投資では長期的な見通しを立てた資金計画が欠かせません。新築で購入しても1年が経過もしくは一人目の入居者が決まった時点で新築ではなくなります。このようなリスクを見据え、あらかじめ自己資金に余裕を持たせてリスクヘッジしていくことで、新築ワンルーム投資で成功する道がひらけるといえるでしょう。
[※1]「No.4155 相続税の税率」(平成31年4月1日現在)国税庁